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人の心を動かす言葉はほんの一言で充分だと、前々からよくお話していますが、
この舞台のラストの、10文字にも満たない一言で号泣してしまって、
「一言」
の重みをまた体感したのでした。
劇団M.O.Pの舞台『KANOKO』です。
あの「芸術はバクハツだ!」で有名な岡本太郎の母、歌人で小説家の岡本かの子のお話です。
3歳の子ども(太郎)を柱にくくりつけて執筆活動に専念したり、夫がいるものの恋人(男妾)を作り(ま、責任の一旦は一平にあるようですが)、あげくには、夫の漫画家・岡本一平と、恋人たちとで、奇妙な共同生活を繰り広げたりと、変わった人物だった岡本かの子。
芥川龍之介とも付き合い(もちろん、そういう意味で/笑)があったりで、波乱万丈な人生を歩んだ方です。
稚拙な目線ですが、簡単に感想をば。
芥川龍之介役の方がとってもハマリ役で面白かったです。
私には彼の織り成すしぐさや言い回し、声のトーンがおかしくて仕方なかった(笑)。すんごいツボでした。
淡々とボケられるのはたまんない(笑)。
で、また役者さんが芥川そっくりだし、それはもう髪質までそっくりだし(笑)、声もきっとこんなんだったんじゃないかしらと思うような色っぽい声。
すごいタラシぶりを発揮してて素敵。
伊達に大学で芥川作品研究の講義を受けたわけじゃないらしく、彼が「今度はね、河童の話なんだ」などと作品解説をするたびに作品のあらすじを思い出しておかしくて。
文学者のお話だから、文学論や芸術論が飛び交って、大学の頃に読んだ論文を思い出しました。
彼らがしゃべる内容が、数年前、自分が浸かっていた世界の言語だらけで、しかもどこかから引用されたのか、聞き覚えのある論が沢山で、あぁ、そうそう、そういう論があったわねぇと、とても懐かしく聞きました。
かの子のセリフ
「日本の文学は暗すぎるの。だからダメなのよ」には、驚きと納得。この風潮の中で、最先端の考え方をしてた人だったのかもしれないですね。
演劇として面白かったのは、
セットチェンジの様子を、わざと光を当てて客席に見せるところ。
大工の集団が出てきて、バタバタ舞台を組み立てて、
「おい!もっと静かにしろ!音をたてるな!!早く早く!!
お客さんに見えたらダメなんだぞ!!」
なんてセリフもあったりなんかして。
セットチェンジシーンまで舞台の一幕にしちゃうのはすごい。
幕を下ろして幕前で、ほんの少しのスペースを使って1シーンやったり、客席の通路を使ったりの演出も私はけっこう好きで、見入ってしまいます。
大声で笑ってしまうところもあって、本当になかなか面白かったです。
主演のキムラ緑子さんの演技はとっても迫力あって、魅力的な女性を描いていて、素敵でした。にじみ出るカリスマ性は、キムラさんのものなのか、かの子のものなのか。
めちゃくちゃな人なのに憎めない主人公から放たれる、オーラがすごかったです。
ラストシーンは、最後の最後まで、静かに涙がこぼれるという展開だったのに、最後の「一言」で、号泣してしまいました。
いろんな意味がありすぎてありすぎて、想いの量が溢れて、その「一言」が想いを支えきれなくて爆発しちゃうんじゃないかと怖くなったほどでした。
言ってしまえば、かの子の駆け抜けた49年が、その一言にぎゅっと押し入ったようで。
その時間と空気と、想いと、この舞台に携わる全ての人の魂が。
その全てが心臓を直撃したような感覚でした。
人が人生を終えるとき、あの一言が聞こえたなら。
きっときっと誰だって、最期の瞬間、ふっと微笑むのかもしれません。